カップボードの中・番外編(光と影)
2023年 06月 07日
私は中学校を卒業後、
高校一年生から親元を離れ、
学業に専念しました…(?)
高校の裏手にあった下宿先の大家さんは、
厳しい方で
同級生の男子から電話があっても
取り継がず、
言わば、
親代わりのような役目も担って下さいました。
また、
奥様が作られるお料理は、
美味しくて温かくて
私は楽しみで仕方ない程でした。
大家さんのお宅のお台所兼食堂で
タイミングの合う下宿生でいただくのですが、
食事の後は自分の食器を洗い
カゴに入れておくのがルールでした。
その洗いカゴの隣に
大家さん専用のカゴがあり、
そこには必ず、
ステムのあるワイングラスがキレイに洗って
ふせてありました。
それは数種類の形違いのグラス、
お台所からの陽の光が
ちょうど差し込む場所に位置し、
当時高校生だった私は食器を洗いながら
そのワイングラスにあたる光と影を見ることが
好きでした。
そのことは、
下宿生同士で話したこともなく
何気ない日常のささやかな事でしたが、
光と影が織り成す
わずかな変化と変わらず感じたぬくもりは
数十年経った今でも覚えています。
先日、カップボードの中で
私の記憶の中にある
あのやわらかな光と影を感じ、
時空を超える一瞬がありました。
by mary_snowflake
| 2023-06-07 09:50
| 家の中