旅まくら
2021年 05月 21日
三十数年前の結婚式間近、
私の荷入れの日に合わせて
義父母が新居に来訪しました。
当時、
私達は今の住まいとは違う地方に在住し、
新幹線に乗って来てくれました。
お仲人様へのご挨拶も兼ねてのことだったと
記憶していますが、
今考えますと、多忙なふたりが時間を作って
出向いてくれたとは有り難いことです。
その時、
義父母からいただいたお土産が、
名古屋銘菓 両口屋是清の詰め合わせでした。
今でこそ、
全国至る所で販売されており、
こちらの地方に住むものとしては
目にも口にも馴染み深いものとなっていますが、
その日、
初めて目にする趣きのあるお箱とお菓子は、
上品この上なく、
それまで味わったことがない美味しさで
感動したとともに、
私の実家の地方に存在する雰囲気とはまた違う
歴史や文化を垣間見たようでした。
こちらを見る度、
三十数年前のその日、
実母を含め皆で荷解きの手を休め、
お茶を楽しんだ場面が甦ります。
天覧 旅まくら
野趣 志なの路
名代 よも山
落ち着いた色合いの詰め合わせは、
けっして
季節を感じるような綺麗な色合いのものではありません。
しかし、
この趣きのある佇まいに
懐かしい気持ちにもなります。
旅まくら
やわらかい薄皮で餡を包んで軽く焼かれ
胡麻の風味を添えたお菓子
外側から、こし餡が透けて見える程の薄皮に
包まれ、
餡をダイレクトに味わう感覚です。
この餡が私は大好きなのです。
そこで、
ひとつ「旅まくら」の蘊蓄を。
↓
こちらの「旅まくら」
70年余り前、
1950年(昭和25年)に誕生したと云います。
昭和天皇、皇后両陛下の旅をお慰めしようと
謹製献上したのが始まりのようです。
二口でいただける大きさに
工夫を凝らし、
旅情を感じられるお菓子にしたいとの願いから、
菊や桐の紋をアレンジしたような畏まったデザインを
あえて使わず、
先祖伝来の茶道具の花入「旅枕」の形に
ヒントを得て作り上げられたお品、
両陛下は大変喜ばれたと伝えられています。
寛永11年、創業
(徳川家光が第三代将軍になって二年後)
貞享3年、尾張藩主より
直筆の「御菓子所 両口屋是清」の
表看板を賜る。
このときにいただいた文字は、
現在でもロゴとして使用され、
暖簾、包装紙などに見ることができる。
名古屋銘菓 両口屋是清のお菓子は、
私にとって
此の地に生まれ育った家人のもとへと
嫁ぐことを
強く自覚した思い出深きお菓子です。
by mary_snowflake
| 2021-05-21 08:05
| 和菓子












