人気ブログランキング | 話題のタグを見る
ブログトップ

ミセス サファイア 静けさの中で

四季を感じながら、食と好きなもの、日々の出来事を通して心のままに綴りたいと思います。


by sapphire

旅まくら



三十数年前の結婚式間近、
私の荷入れの日に合わせて
義父母が新居に来訪しました。

 当時、
私達は今の住まいとは違う地方に在住し、
新幹線に乗って来てくれました。


お仲人様へのご挨拶も兼ねてのことだったと
記憶していますが、
今考えますと、多忙なふたりが時間を作って
出向いてくれたとは有り難いことです。




旅まくら_f0376195_20181896.jpg


旅まくら_f0376195_22302423.jpg


その時、
義父母からいただいたお土産が、
名古屋銘菓 両口屋是清の詰め合わせでした。

今でこそ、
全国至る所で販売されており、
こちらの地方に住むものとしては
目にも口にも馴染み深いものとなっていますが、

その日、
初めて目にする趣きのあるお箱とお菓子は、
上品この上なく、
それまで味わったことがない美味しさで
感動したとともに、
私の実家の地方に存在する雰囲気とはまた違う
歴史や文化を垣間見たようでした。



こちらを見る度、
三十数年前のその日、
実母を含め皆で荷解きの手を休め、
お茶を楽しんだ場面が甦ります。




旅まくら_f0376195_21202124.jpg


旅まくら_f0376195_22312423.jpg


天覧 旅まくら
野趣 志なの路
名代 よも山


落ち着いた色合いの詰め合わせは、
けっして
季節を感じるような綺麗な色合いのものではありません。
しかし、
この趣きのある佇まいに
懐かしい気持ちにもなります。



旅まくら_f0376195_20181896.jpg


旅まくら

やわらかい薄皮で餡を包んで軽く焼かれ
胡麻の風味を添えたお菓子



旅まくら_f0376195_20191820.jpg



外側から、こし餡が透けて見える程の薄皮に
包まれ、
餡をダイレクトに味わう感覚です。

この餡が私は大好きなのです。



そこで、
ひとつ「旅まくら」の蘊蓄を。

旅まくら_f0376195_14512834.jpg




こちらの「旅まくら」

70年余り前、
1950年(昭和25年)に誕生したと云います。

昭和天皇、皇后両陛下の旅をお慰めしようと
謹製献上したのが始まりのようです。



二口でいただける大きさに
工夫を凝らし、
旅情を感じられるお菓子にしたいとの願いから、
菊や桐の紋をアレンジしたような畏まったデザインを
あえて使わず、
先祖伝来の茶道具の花入「旅枕」の形に
ヒントを得て作り上げられたお品、

両陛下は大変喜ばれたと伝えられています。




旅まくら_f0376195_20181896.jpg


旅まくら_f0376195_15504979.jpg
(画像はお借りしました。)


寛永11年、創業
(徳川家光が第三代将軍になって二年後)

貞享3年、尾張藩主より
直筆の「御菓子所 両口屋是清」の
表看板を賜る。

このときにいただいた文字は、
現在でもロゴとして使用され、
暖簾、包装紙などに見ることができる。



旅まくら_f0376195_15373875.jpg


旅まくら_f0376195_20152783.jpg



名古屋銘菓 両口屋是清のお菓子は、
私にとって
此の地に生まれ育った家人のもとへと
嫁ぐことを
強く自覚した思い出深きお菓子です。



旅まくら_f0376195_20144054.jpg



警戒レベルの大雨です。
皆さま、
お気をつけてお過ごし下さいますように。




by mary_snowflake | 2021-05-21 08:05 | 和菓子